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院長ブログ

2013年4月16日 火曜日

ヘリコバクターピロリ菌2

ピロリ菌は生まれながらに感染しているわけではなく、免疫力の完成していない2~5才ぐらいのときに慢性感染者になるかどうかが決まります。
その時に感染していなければ急性感染はありえますが、一生慢性感染者になる可能性がなくなると考えられています。
もともと土のなかにいる細菌です。ですから公衆衛生の整っていない地域では井戸水や野菜などから感染します。
(東南アジアに感染者が多いのもそれが原因の一つでしょう。)。
日本でも戦前はこういう感染経路が充分あったのでしょうが、現在のような衛生状態では可能性が低いと思われます。
ですから現在の10代や20代の若者の感染者は10%前後と言われています。
少ないながらも存在する10%前後の感染者の感染ルートは親など親族からの経口感染(口移しや噛み砕き感染)と考えられています。
免疫力が完成するまでの感染の危険性を回避できれば,胃癌になる可能性がきわめて低いということになります。
高齢者になったら除菌する必要はないのではないかという質問を時々受けます。
確かにピロリ菌除菌はなるべく早期、つまり若い時に行うほど胃癌の予防効果は高いということがわかっています。
また、ご高齢になってから胃癌になっても体力的な問題などで治療が不可能な場合や
胃癌以外の原因でなくなる可能性も十分あるので胃癌を予防してもそんなに意味はないという意見もわかります。
しかし、この考えは高齢になったら胃癌になっても治療をする必要がないと言っているのと同じです。
高齢者とはいえ出来るだけ胃癌にならないように予防できることはしてあげるべきではないでしょうか。
さらにご本人の体のこと以外にその御家族、特にお孫さんなどへの感染経路を絶つという意味もあるのです。
もし日本からピロリ菌が絶滅したら胃癌の発生は極めて少なくなる(ピロリ菌感染陰性の胃癌も非常にまれですが存在します)
と考えられていますので、そういう長期的な展望を考慮して費用対効果ありと国も判断して保険適応に踏み切ったのではないかと思います。
ただ、除菌についてはまだいくつかの問題点が残っています。
まず、除菌は一次除菌と二次除菌がありますが、明らかに効果が弱く費用も高い一次除菌から行わねばならないこと、
そして二次除菌無効の場合の次の治療法が確立されていない事、除菌薬に副作用のある方はどうするかなどです。
しかし、いずれにしろ今回の保険適応は画期的な一歩だと思います。
ただ10年以上前から保険適応にするべきだと医療側が訴えていたことです。
国の決断の遅さを改めて考えさせられます。

ピロリ菌の検査と除菌も花畑クリニックでできます

投稿者 医療法人社団 緑水会 | 記事URL

2013年4月10日 水曜日

ヘリコバクターピロリ菌

今年ヘリコバクターピロリ菌の治療が潰瘍がなくても保険適応となりました。
胃内視鏡検査を行い、ピロリ菌感染が疑われると思われた場合は潰瘍がなくても除菌が出来るようになったのです。
私から言わせると”やっと”という感じです。
胃癌大国と言われてきた日本がその汚名を晴らせる状況がきつつあるのです。
ピロリ菌除菌の保険適応は胃潰瘍、十二指腸潰瘍の人だけであった時代が長く続き、
その後悪性リンパ腫のひとつであるマルトーマ、胃癌での視鏡治療後、さらには血小板減少性紫斑病の適応が認可されました。
しかし、そういう疾患の人は少なく、ピロリ菌除菌を希望する方は保険が使えず自費で行わざるを得なかったというのが現実でした。
なぜ保険適応が認められなかったのかというとその費用対効果を国が考えたからです。
日本人のピロリ菌感染率は50歳以上では60%以上と言われています。
それを保険で行った場合の費用と、そのまま放置してそれが原因で病気になった時の治療費用を比較したのです。
ピロリ菌が原因で起こる、あるいは起こる可能性があるといわれている疾患は最近どんどん増えてきています。
胃の疾患はほとんどですが、他にはアトピーや蕁麻疹などのアレルギー疾患、貧血、さらには老人性痴呆も疑われているようです。
少なくとも間違いなく言えるのは百害あって一利なしということです。
その中で科学的な証拠もそろっていて一番怖いのはなんといっても胃癌です。
ピロリ菌感染者の中で胃癌になる人はそんなに多いわけではありませんが、
胃癌になる人のほとんどはピロリ菌感染者です。
次回はなぜピロリ菌に感染するのかをお話します。

ピロリ菌の除菌も花畑クリニックで

投稿者 医療法人社団 緑水会 | 記事URL

2013年4月4日 木曜日

腸閉塞について2

前回、腸閉塞についてお書きしましたが続きをアップしたいと思います。
前回は腸が捻じれて起こる閉塞についてお話しましたが一番怖いのは腸閉塞のもう一つ、腫瘍などによる腸閉塞です。
その代表が大腸癌です。
(おそらく坂口良子さんはこのケースであっただろうと想像されます。)
癒着性腸閉塞は開腹既往がある方がほとんどです。つまり開腹既往がない方の腸閉塞は大腸癌の可能性が高く、とても危険なのです。
大腸癌は大腸の内側にある粘膜から発症します。
その後腫瘍は内側に発育していき最終的に大腸の内腔を占拠すると
便もガスも通さなくなって腸閉塞になります。
もちろんこの時には進行癌になっていますので転移している可能性が高いことになります。
また、癌による腸閉塞ではその口側の大腸が著明に拡張し、最終的には腸が破れて便が腹腔内に漏れて腹膜炎になることがあります。
便による腹膜炎は非常に予後の悪い病気の一つです。
同じような腫瘍でも出来る場所によって症状の出方が若干変わります。
肛門に近い場合は便が固まりになっていることが多いので、そんなに腸が狭くなくても便が通りにくくそのための腹満感などが出やすいのですが、
肛門から遠い大腸(坂口さんに出来たといわれている横行結腸など)では便が粥状ですので、多少腸が狭くても便が通過し腸閉塞症状は出にくいのです。以前は直腸癌が非常に多かったのですが、最近では肛門から遠い癌の頻度が増加してきています。
以前は直腸やS状結腸など肛門に近い癌が多数を占めていたのですが、最近は肛門から遠い癌がどんどん増加してきています。
すなわち症状が出にくい場所の癌が増加してきているということになります。
便秘気味の方や便潜血陽性の方はもちろんですが、症状のある・なしで安易な判断はせず、
定期的に大腸を全部観察する全大腸内視鏡検査を行われることを是非お勧めします。

花畑クリニックでは定期的な全大腸内視鏡検査をおすすめしています。

投稿者 医療法人社団 緑水会 | 記事URL

2013年4月2日 火曜日

腸閉塞について

先日芸能人の坂口良子さんが亡くなられました。
報道によると昨年腸閉塞となり、肺炎およびインフルエンザを併発したということです。
直接の死因は明らかになっていませんが、腸閉塞がそのひとつの要素であったことは間違いないと思われます。
そこで今日は腸閉塞についてお話したいと思います。
腸閉塞の症状は腹痛、嘔気、腹満などです。
腸閉塞はその名のとおり腸が閉塞してしまう状態をさします。
いろいろな原因で起こりますが、頻度的に多いのは次の二つです。
一つは腸が捻じれて閉塞してしまうもの、もう一つは腫瘍等によって閉塞してしまうものです。
まず腸が捻じれておきるのは開腹手術後の腸の癒着が原因です。これは癒着性腸閉塞というものです。
つまり過去に開腹手術の経験がある方はこの可能性があります。
そもそも腸は食物を運ぶために常に動いています(これを蠕動運動と言います)。
普通は腸はどこにも癒着していないのですから、どんなに動いても捻じれたりはしません。
しかし、開腹手術をするとほぼ全例少なからず癒着します。
開腹した時のお腹の傷は縫合するわけですが、抜糸しても傷が再び開くことはありません。それは体が傷をくっつける接着剤を分泌するからです。
しかしその接着剤は傷をくっつけるだけではなく、お腹の中に出たものは腸と腸や腸と腹壁などもくっつけるのです。
その状態で腸が動くわけですが、癒着している部分が動けず軸となり、ほかのフリーな部分が自由に動くことで捻じれたりします。
腸が捻じれることで腸の管腔が狭くなったり塞がれたりするのです。これが癒着性腸閉塞の機序です。
閉塞した手前、つまり口側の腸は食べ物や腸液などでどんどん拡張していき、腹痛や吐き気などを起こします。
治療は絶食点滴が基本ですから入院が必要になります。
拡張が強い場合は閉塞部の手前まで管を挿入して体の外に吸引することが必要になります。それでも改善しない場合は手術が必要となります。
また、捻じれ方が激しかったり、体から分泌された接着剤が紐状になりこれが腸を締め付けたりして、腸の血行が悪くなった場合は壊死してしまいます。
診断時期や治療法を間違えると命の危険があります。緊急手術の適応です。
これは絞扼性腸閉塞と言われるもので、もちろん医者が一番気をつけなければいけない状態です。
しかし、癒着性腸閉塞は絞扼性腸閉塞と嘔吐物の誤飲による肺炎さえ気をつけていれば命を落とす危険はまずありません。
少し長くなりましたので後の一つは後日にします。

大腸内視鏡検査なら花畑クリニックへどうぞ

投稿者 医療法人社団 緑水会 | 記事URL