院長ブログ
2013年4月2日 火曜日
腸閉塞について
先日芸能人の坂口良子さんが亡くなられました。
報道によると昨年腸閉塞となり、肺炎およびインフルエンザを併発したということです。
直接の死因は明らかになっていませんが、腸閉塞がそのひとつの要素であったことは間違いないと思われます。
そこで今日は腸閉塞についてお話したいと思います。
腸閉塞の症状は腹痛、嘔気、腹満などです。
腸閉塞はその名のとおり腸が閉塞してしまう状態をさします。
いろいろな原因で起こりますが、頻度的に多いのは次の二つです。
一つは腸が捻じれて閉塞してしまうもの、もう一つは腫瘍等によって閉塞してしまうものです。
まず腸が捻じれておきるのは開腹手術後の腸の癒着が原因です。これは癒着性腸閉塞というものです。
つまり過去に開腹手術の経験がある方はこの可能性があります。
そもそも腸は食物を運ぶために常に動いています(これを蠕動運動と言います)。
普通は腸はどこにも癒着していないのですから、どんなに動いても捻じれたりはしません。
しかし、開腹手術をするとほぼ全例少なからず癒着します。
開腹した時のお腹の傷は縫合するわけですが、抜糸しても傷が再び開くことはありません。それは体が傷をくっつける接着剤を分泌するからです。
しかしその接着剤は傷をくっつけるだけではなく、お腹の中に出たものは腸と腸や腸と腹壁などもくっつけるのです。
その状態で腸が動くわけですが、癒着している部分が動けず軸となり、ほかのフリーな部分が自由に動くことで捻じれたりします。
腸が捻じれることで腸の管腔が狭くなったり塞がれたりするのです。これが癒着性腸閉塞の機序です。
閉塞した手前、つまり口側の腸は食べ物や腸液などでどんどん拡張していき、腹痛や吐き気などを起こします。
治療は絶食点滴が基本ですから入院が必要になります。
拡張が強い場合は閉塞部の手前まで管を挿入して体の外に吸引することが必要になります。それでも改善しない場合は手術が必要となります。
また、捻じれ方が激しかったり、体から分泌された接着剤が紐状になりこれが腸を締め付けたりして、腸の血行が悪くなった場合は壊死してしまいます。
診断時期や治療法を間違えると命の危険があります。緊急手術の適応です。
これは絞扼性腸閉塞と言われるもので、もちろん医者が一番気をつけなければいけない状態です。
しかし、癒着性腸閉塞は絞扼性腸閉塞と嘔吐物の誤飲による肺炎さえ気をつけていれば命を落とす危険はまずありません。
少し長くなりましたので後の一つは後日にします。
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